こんにちは。青芝夏樹です。発達障害の方に役立つ記事を書いています。
発達障害のある方は、興味があることにはすごく没頭できる特性があります。しかし、興味がないことには集中力が続かないことも多いでしょう。
また、ケアレスミスや忘れ物・なくし物が多く、予定や約束をすぐに忘れてしまって自己嫌悪に陥る人もいます。気も散りやすく、用事をしていても他に気を取られて用事を忘れてしまう。順番を決められない、計画、片付け、時間管理が苦手な人も多いでしょう。
今回は、その中でも、どこに置いたか忘れてしまう場合の対処方法をお伝えします。
発達障害でなくてもよくあることですが、発達障害の方は特に多いでしょう。
あなたは、「指差呼称」という言葉を聞いたことありますか?
厚生労働省のホームページによると、「KY活動の一環として、作業対象、標識、信号、計器類に指差しを行い、その名称と状態を声に出して確認すること」と書いてあります。
「KY」と言っても、「空気読めない」ではないですよ(笑)。「KY(危険予知)」の略です。
元は、日本国有鉄道の蒸気機関車の運転士が、信号確認のために行っていた安全動作でしたが、現在では鉄道業にとどまることなく、航空業、運輸業、建設業、製造業等、幅広い業界で行われています。
人間の意識レベルを5段階のフェーズに分けた「フェーズ理論」によれば、対象を指で差し、声に出して確認する行動によって、意識レベルを「フェーズⅢ(脳が活発に動き、思考が前向きな状態)」に上げ、緊張感、集中力を高める効果をねらった行為とされています。
指差呼称の効果
1994年、財団法人(現、公益財団法人)鉄道総合技術研究所により、効果検定実験が行われました。同実験によれば、「指差しと呼称を、共に行わなかった」場合の操作ボタンの押し間違いの発生率が2.38%であったのに対し、「呼称のみ行った」場合の押し間違いの発生率は1.0%、「指差しだけ行った」場合の押し間違いの発生率は0.75%でした。
一方、指差しと呼称を「共に行った場合」の押し間違いの発生率は0.38%となり、指差しと呼称を「共に行った」場合の押し間違いの発生率は、「共に行わなかった」場合の発生率に比べ、約6分の1という結果でした。
また、2010年、広島大学大学院保健学研究科による研究論文「確認作業に『指差し呼称』を用いた時の前頭葉局所血流変動の比較」が発表されました。この研究は、医療現場における確認・観察の怠慢、誤判断を回避する手段として「指差し呼称」の有効性を検証する目的をもって行われました。
同論文によれば、「『指差し呼称』法のほうが、『黙読』法、『指差し』法、『呼称』法よりも前頭葉におけるHV(前頭葉における血中酸素化ヘモグロビン変化量)が多かった」、「『指差し呼称』法が、『黙読』法とでは左前頭前部、『指差し』法とでは、右前頭前部において認知機能の活性化が図られている可能性が示唆された」、「これらのことから、与薬(薬を処方すること)の準備段階においてなされる作業の確認方法として、『指差し呼称』法の有効性が示唆された」と結論付けられています。
指差呼称だけでヒューマンエラーの根絶を実現することはできませんが、上記の実験、研究から、指差呼称は、「意識レベルを上げ、確認の精度を向上させる有効な手段」であるといえます。
一般的な指差呼称の手順
一般的に、「指差呼称」は以下の手順で行われます。
(1)対象をしっかり見る
(2)対象を指で差す
呼称する項目を声に出しながら、右腕を真っ直ぐ伸ばし、対象から目を離さず、人差し指で対象を指差します。
なお、指を差す際、右手の親指を中指にかけた「縦拳」の形から、人差し指を真っ直ぐに突き出すと、指差しが引き締まります。
(3)差した指を耳元へ
差した右手を右の耳元まで戻しながら、「本当に良いか(正しいか、合っているか)」反すうし、確かめます。
(4)右手を振り下ろします
確認できたら、「ヨシっ!」と発声しながら、対象に向かって右手を振り下ろします。
また、(1)~(4)の一連の動作は、左手を腰に当て、背筋をピンと伸ばし、キビキビと した動作で行うことが奨励されています。
今回の指差し呼称の提案
どこに置いたか忘れるということは、無意識に置いているということなので、
ものを置くときに
①見る
②指を差す
これだけでOKです。
私もどこの置いたか忘れることが多かったので、この方法を用いてからはほとんど忘れることがなくなりました。
慣れるまでは、指差呼称をすることすら忘れますが、習慣化すると忘れなくなります。
試してみてください。